働き方改革関連法案にてデータ改ざんが取り沙汰されている。
ニュースでは連日裁量労働制にスポットライトが当たっているようだ。
実は2000年代前半に裁量労働制で勤務した経験がある。
例の改ざんデータのアンケートを実施したころには違う部署に異動していたので残念ながら回答には至っていない。
思わずメールのアーカイブにアンケートが無かったか探してしまったヾ(@°▽°@)ノ
あったら自慢げに貼り付けられたのに残念。ʅ(◞‿◟)ʃ
タイムリーな話題なのでもし採用された場合どうなるか当時の経験を思い出してみよう。
結構古いので記憶違いがあるかもしれないのでご容赦を。
社内のいくつかの部署で裁量労働制が唐突に始まった。
裁量労働制の適用は年収ではなく職位で決定された。
採用部署の赤字の職位が本人の意思とは無関係に裁量労働制になった。
本部長、部長、課長格、主任、一般社員A、一般社員B、新入社員
(部長以上は管理職なので元々裁量労働制のようなもの。分かりやすくするため一部デフォルメしてある。)
当時のポジションは課長格だった。
部長以上が管理職だったので課長格は従業員サイドとなる。
裁量労働制を採用するにあたり給与に手当として組み入れられたのが月20時間の残業代だ。
基本給アップではなく手当に付与というのが小ずるいやり方だった。
20時間までは手当に残業代分が含まれておりそれ以上働くと全てサービス残業になる。
記憶によると基準となる20時間は残業時間の平均値を採用したと発表された。
実態は60~80時間働いていた人も多かった。
36協定の足かせで実際に働いている時間より報告できる時間が少なくなっていたのと残業時間が存在しない営業職なども交ぜて20時間に見せかけたとしか思えない。
それほど現実離れした数字だった。
ただ自分は残業をしていなかったのでこのあたり詳しくはない( ゚Д゚)
それに自分にとって裁量労働制は渡りに船のような制度だった。
上司と成果を数字で決めており部署に振り分けられた売上目標を自分のチームに更に振り分け120%超えること、納期と決められた品質で提供することを目標として取り決めていた。
そのための仕事の進め方やチーム構成も予算内で権限移譲されている。
もっと細かくいえば予算も売上と利益から自分の裁量で決めた。
上司に相談すればアドバイスをもらえるが口出しはされない。
それに同じ部署の別のチームと連携出来ない業務内容だったのでお互いに助け合う必要も無かった。
チーム内には社員と派遣社員の方で構成しており能力の高い人をスカウトしていた。
派遣社員は調達価格を判断する権限もあったので優秀であれば社員よりも優遇させて貰った。
そんな環境の中で納期と品質に関連性が低い業務をカットや改善して効率化を図り品質の向上と速度を上げていた。
高い戦力と多くの無駄を省いたおかげで毎日15時や16時に帰宅してジムに通っていた。
朝は10時~11時に出社して昼休みは2時間近く取っていた。
チームメンバーも同じように早く帰っていく人もいれば今後のために新しい技術を習得して将来のキャリアを考えてた人もいた。
経営者の視点では社員が効率化した成果はリストラで利益に還元できる。
「効率化すればするほど人は減り」なんて川柳もあるが、
それとは異なりチームの成果はチーム内で甘受しようという考えだったので余裕が出た分を余暇や勉強時間にしていた。
年収も上がり仕事も楽になった。
裁量労働制バンザイヽ(^o^)丿
なんていい制度なんだろう。
もしこの時代が続けばアホみたいに楽だったので会社を辞める事などなかったΣ( ̄ロ ̄lll)
このように自身の裁量で業務ができる環境があるか、会社が成果を定量的に評価できる仕組みがあれば裁量労働制は機能する。
但しこれは上司に恵まれて怠け者が裁量労働制おかげで運よくハッピーになったレアなケース、いや奇跡のケースだろう。
他のチームや他の部署の社員と飲みに行き話を聞くと大半はサービス残業の押しつけだと文句をいいながら少なくなった給与で夜遅くまで働き休日出勤をしている愚痴ばかりだった。
効率化できる部分もあったように見受けられるが仕事の変革が出来ない社員が多かった。
今まで自分がやってきた仕事のやり方が正しいと考えている人に自助努力で残業を減らせといっても難しい。
会社は裁量労働制の準備も教育もしなかった。
裁量労働制適用に際して何のガイドラインも作らず社員の自主性に任せるのは責任放棄以外のなにものでもない。
年収が高い社員がその程度のことはできるのだろうと会社側の思い違いもあったかもしれない。
一方明らかに裁量労働制を採用してはいけない部署にも適用されていた。
成果が評価しにくく部署間の歯車のようになっている職場や一定時間働くことが前提になっている職場や医者のようにいつ呼び出されていつ仕事があるか分からない職場の人たちにとっては悲惨だった。
成果が明確でなければ人によっては例えば60時間以上残業をかけて片付けていたワーク量をそのまま20時間以内でこなさなければならず会社がその対策を事前に取っているわけではなかった。
一定の残業とシフトを組んで対応していた職場が裁量労働制で増員されたわけでもないので20時間以上の残業分は社員がサービス残業として飲み込んでいた。
呼び出しについては手当だけ付与されていたようだが働いた時間は裁量制の範囲内だということになり雀の涙のようなコストで働かされ続けていた。
裁量労働制から通常時間勤務の部署に異動したのちに辞めた。
その後裁量労働制の部署はどうなったかといえば多くが業務縮小しており労基の指導も受けたようである程度正常化しているらしい。
早い話が稼げなくなった部署の体のいい人件費削減だったわけだ。
これから赤字事業部は罰のように裁量労働制導入からのリストラというながれが流行るかもしれない。
裁量がない職場に裁量制度を導入するのは間違いなくブラック企業の温床となりこれまでは36協定などの法令で守られてきたものが今後は管理職のようにいくら働かせても法的に歯止めが無くなる。
いわゆる「定額働かせ放題」時代に突入する。
だから職種で選択するだけでなくどのような条件であれば採用できるかを細かく設定する必要がある。
自分の思うだけでもこの条件のいくつかが揃っていないと裁量労働制の採用はブラック化に向かうだけだ。
- 目標が定量化され過去に優秀な社員が週40時間で完了した実績のある業務
- 可視化された成果で平等に人事考課がされる(長時間労働者にいい評価では…)
- 月間・年間目標が明確になっている(早く終わったら次の仕事を足されるのでは)
- 目標に対する手段が権限移譲されている。
- 会社の基準となる利益率(粗利)以上確保できれば予算内で編成や業務改善を行う権限
- チームやプロジェクトであれば組織編成が一任される
- 余裕があったら別のチーム、プロジェクト、部署からヘルプとして人員を割かれない
国会議員が検討すれば歯止めの効かない制度を推進するに決まっている。
本来は労組と経済三団体から選出したメンバーの有識者を集め裁量労働制を採用出来る条件を検討すべきだと考える。
→ 裁量労働制 全面撤回(3/1)