大腸がんESD手術入院 2日目 手術当日

睡眠導入剤を飲んで寝たのだが2時間で隣の患者のいびきで起こされた。

カプセルホテルではなく病室の個室なのでそこそこ防音はあるはずだがそれを超える爆音なのだろうか。

このペースだと手術よりも睡眠不足で体調を崩しそうだ。

元々中途覚醒もあるので一度起きてもすぐ寝られるが爆音が響いているととても寝直せない。

完全に目を覚ましてしまった。

たまに苦しそうな息継ぎが聞こえるので睡眠時無呼吸症候群でもあるようだ。

例の舌回しでも伝授してあげようか。

見回りに来た看護師さんに状況を告げると目が覚めた時に再度睡眠導入剤が使えないか担当医に相談するらしい。

でも二度寝に睡眠導入剤はまずい気がする。

最悪な体調で手術の日を迎えてしまった。

相部屋だと他人のいびきで眠れないと考えて1日13000円もする個室にしたつもりだったのだが。

朝から便意があり下痢のような痛みと共にかなり排泄した。

寝不足も影響したのだろう。

大腸内視鏡検査では下剤を飲むまで便が出ることはなかったが今回はすでに半分は排便している。

7:30頃に配膳の係の方が朝食を配っているが自分の部屋にはこない。

昨日の夕食から累計66時間食事ができない。

それに前日の夜から手術までは点滴も無いし今回は飴も何も駄目なので低血糖が怖い。

まさに絶食ダイエットだ。

下手に動いてカロリーを消費しないようにしよう。

漂ってくる食事の匂いを感じてお茶を飲む。

今日は秋一番の寒さだとテレビが報じていた。

病室は温度管理がしっかりしているので過ごしやすい。

入院中、上は長袖のTシャツ、下はベルトレスのレギンスで過ごすことにした。

入院患者の正装はパジャマだと思うが持っていないし準備もしなかった。

雲が綺麗なので記念に病室の窓から。

朝一番はお腹も減っていなかったが8時過ぎて体内の活動が活発になったのかペコペコでつらい。

朝一番でシャワーを使わせてもらった。

これから2日間シャワー禁止なのでギリギリに洗っておく。

そしてベッドの上にやってきた恐怖のモビプレップだ。

モビレップ2000cc中1500ccと水750ccを2時間かけて飲み干さないといけない。

1ヶ月前にも大腸内視鏡検査でやっているので慣れた手つきで専用コップに250cc注ぎ15分毎に飲んでいく。

あれ?前回ほど不味くない。

嬉しくないが慣れてしまったか。

袋を見ると白いものが沈殿していた。

あ、しまった。

振って混ぜるの忘れた。

2杯目から前回の味が蘇る。

濃くなりやっぱ不味いわ。

差し込んできたのでトイレへ駆け込む。

個室なのでトイレが占領できて助かる。

相部屋だと共同トイレで病棟のトイレの数は少ないため別のフロアを探し回らないといけないので個室で正解だ。

最初の便通はモビプレップの効能ではなくただの下痢で下腹部全体が痛い。

下痢なのに下剤って大丈夫なのかと飲み続ける。

1時間後には痛みのない便通に変わり下痢ではなくなり下剤による水便になった。

間に飲むお茶がうまい。

下痢だったのであっという間に便の色のチェックも終わり手術の準備完了だ。

困ったのは途中でやってきたトイレの清掃だ。

(毎日同じ時間にトイレ掃除がやってくる)

なんとか清掃中は便意を我慢できたが統合病院システムで内視鏡手術があるからトイレ掃除は時間を変えるかスキップするように計画してくれれば患者の満足度も上がるはずだ。

あまり儲かっていない総合病院も例えば星野リゾートあたりの監修を受けてサービス改善するのはいかがだろう。

逆に星野リゾートブランドで病院作ったらどうだろう。

くだらない事を考えていると腹が減る。

下剤を飲んでいる間は腹に水が溜まっているので感じなかったが飲み終えると途端にお腹が空いてくる。

前回の検査なら夕方食べられたが今回は明後日の昼まで絶食になる。

13時頃に点滴をつけられる。

左手が不自由になった。

2日間はこの煩わしい生活か。

そして手術室に移動して担当の看護師より本人確認をされて準備で15分ほど部屋の前で待ってESD手術開始。

この病院の通常手術は13:30から開始で15時に手術室に入ったのでおそらく2番目だ。

前回の大腸内視鏡検査と同じタイプの部屋だった。

違いは執刀する担当医の他にインターンのような若い助手が付いている。

それにサポートの看護師の3名体制だ。

まずは横になりお尻を突き出した状態で鎮痛剤を点滴の針から注入される。

ふわふわして気持ちがいい。

でもこれまでよりキツめの鎮痛剤で若干めまいを感じるほど。

患者も大腸ファイバースコープから映し出されるモニターで手術の様子を見ることができる。

ガスを大量に入れるのでお腹が張る。

大腸ファイバースコープは3回目なので当初は我慢できる範疇だった。

結腸が折れ曲がってしまっているようで中々ファイバースコープが通らず横になったり仰向けになったりして10分くらいで盲腸付近のポリープにたどり着く。

前回より手間取っている。

エアの張りでキツい。

モニタに目を遣るとポリープのある患部をわかりやすくするムラサキの染具をかける。

しばらく観察したのちに長い針を差し込んで粘液をポリープに注射して少し膨らませて針を抜いて今度は電気メスを入れて少し切っていく。

薄い大腸壁にできた平たいポリープをスライスするので厚みを作らないと切れない。

医療ドラマでイメージするような電気メスでザクザク切るのではなくパチッバチッと短いパルスで微小な穴を開けて焼き切っている。

例えると紙にまち針で穴を開けて縦に並べると紙が切れるのと同じ仕組みだ。

それを二次元ではなく三次元で行う。

僅かに切るとまた注射針を入れてポリープに注射して膨らませてメスを入れて焼き切る。

長い注射針のようなものと電気メスをシュッシュと内視鏡ファイバーの管の中を何度も入れ替えて膨らませては少し切るを延々と繰り返す地道な作業だ。

少し切り進むのにものすごく時間がかかっている。

出典高野病院

ネットでこんなESD手術の図解を見ていたので注射1回で餅のように膨らませてあとはドラマのようにザクザク切るとイメージしていたのでまるで違った。

逆にこれらのデフォルメ図解を見ていたので何をしているか理解できたわけだ。

お腹がパンパンに張って下痢のような痛みが襲ってくるのを我慢しながらモニターを見ていた。

膨らませる注射針を刺すときと電気メスを当てるときに肛門のあたりにチクリと痛みが走る。

普通の人は大腸粘膜に神経が無いので痛くないらしい。

だから助手の人が不思議がり気にしてくれていた。

おそらく過敏性腸症候群のせいだと担当医が助手に説明していた。

手術が延々に終わらないのではないかという不安感と時々襲ってくる針を刺すような痛みで張りの痛みも倍増する。

開腹手術の全身麻酔なら寝ている間に終わるが「手術後の回復を考えればこれが正解だから我慢だ!」と念仏のように頭で唱えていた。

しかし時計が開始から2時間半経過しても終わる気配がないのでもう取り切れなくていいからやめて欲しくなり、張りの痛みが辛いと医師に告げたら睡眠剤を入れてくれて痛みが軽減された。

それでもまだ痛いので追加してもらったところ意識が遠くなり気がついたら終わっていた。

我慢せずもっと早く言えばよかったと思うが切る位置によって横になったり仰向けになったり腹這いになったり何度も体勢変更を指示されたので患者が早々に寝てしまうと執刀が難しくなってしまう。

それに穿孔した場合も考えて患者が起きていた方が痛みを告げることができる。

手術時間は2時間50分だった。

まさかこんな大手術になるとは思ってもいなかったので心の準備ができていなかった。

1人目が13:30から手術を受けて2人目の自分が15:00からだったので両者の準備時間も考慮したら長くて4、50分で手術が終わっている。

だからどれだけ長くても1時間強だろうと都合よく考えていた。

おそらく1人目は手術時間から推測すると針金のような輪っかをかけて焼き切るポリペクトミーだったと想像できる。

ポリペクトミーとESDの手術時間を一緒にしてはいけない。

最後に担当医の手にあるシャーレに貼り付いていた切除後のポリープをストレッチャー越しから見たところ向こうが透けて見えるほど極薄に剥ぎ取られていた。

医師曰く、実寸で直径4cmあったようだ。

ほぼ大腸の直径サイズではないか。ヒイィィィ!!!!(゚Д゚ノ)ノ

寝ていたので最後どのように剥ぎ取ったかわからなかったのは残念だ。

モニター見ていたときはグチャグチャに切っているようにも見えたが超薄切りにスライスされたポリープを見て執刀医の腕恐るべしと感心した。

4cmサイズで、形状が平らで、ヒダに乗っていたし、大腸の一番奥で、それも突き当たりでメスの角度もつけにくいESDの中でも難易度の高い手術だったのではなかろうか?

担当医の論文のネタにできそう。

最初に大腸カメラでポリープを見つけてくれたクリニックの医師は自分でやらないのをいいことに簡単な手術みたいに言いおって、騙されてしまった。

そして執刀していただいた担当医はブラックジャック先生と認定させていただきたかったが患部10cmで3時間と公言している医師もいるようなのでそこまでではなかったのかもしれない。

あと切り取ったポリープは病理検査に回すのでがん細胞がない事を祈ろう。

寝たままストレチャーで病室のベッドまで運ばれて2時間絶対安静となった。

痛みがなくなったので何だかとってもいい気持ちで運ばれていく。

しばらく寝ていると鎮痛剤が切れ、右でなく左脇腹が痛くなる。

前回の大腸内視鏡検査と違いオナラは出なかった。

炭酸ガスを使ってくれたためだ。

しかしある程度は出るらしい。

全然出ないが大丈夫なのか。

このままだと脇腹痛の悪化が確定だ。

その後看護師さんが点滴を1リットル入りの大容量に変えてくれた。

あまり身動きもできないので入院のために3ヶ月299円のキャンペーンで契約したAmazon Kindle unlimitedで適当に書籍を斜め読みして就寝まで暇を潰した。

鎮痛剤が切れ左右の脇腹が痛いものの胃は健康なので腹が減っているという変な状態。

それでも手術中のあの苦しさに比べればかわいいもの。

痛みの悪化も考慮して看護師さんに相談したところ複数の種類の痛み止めのメリットデメリットを教えて親身に提案してくれた。

とりあえずもう少し痛くなったらと今回点滴に入れてもらうのはパスした。

痛み止めのせいで万が一の穿孔に気がつくのが遅れるのは嫌だ。

看護師長さんも何度か顔を出してくれるし看護師さんは優しい。

このご時世によくこれだけの看護師さん集めたと思う。

最初は大学病院か日赤病気に行きたかったが「ここはいい病院だ。」(マクベ風)

手術が成功した途端に褒める現金な奴。

ガン専門なのでがんの疑いがないと入院できないのが残念なほど。

退院して次回通院時にはナースステーションに手土産でも持ってこよう。

そして就寝時間に睡眠導入剤を飲んで隣の爆音ジジイより先に寝てやったぞ。笑


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