熊野古道旅行記2日目

今日は熊野古道の大門坂~小口の17.6kmを歩く。

7:50に歩き出して名古屋行き最終のワイドビューに間に合う15:35の小口バス停で乗れればいいのでハイキングの時間は7時間45分もある。

単純計算で時速2.2kmでいいので休み休み歩いても間に合わない道理がない。

まず5:30に起床して6:30にホテルをチェックアウトしてコンビニで朝食を買い込み新宮駅から那智駅へJRで移動する。

普通電車で注意が必要なのは無人駅なので先頭車両からしか下車できないこと。

中々ドアが開かないので不思議に思っていると学生さんに教えてもらい先頭に走って降りることができた。

那智駅で昼食を買おうと思ったがコンビニがない。

仕方がないので朝食を控えて昼食に回した。

予定通りバスが到着して、

大門坂へ移動した。

運転手さんが親切に我々ともう一組の白人の夫婦に大門坂の方向を教えてくれた。

まずはここから那智大社まで登る。

那智大社からはこの予定で総距離17.6kmのルートだ。

熊野古道をなめていた。

17kmのハイキングだから6時間もあれば余裕だと高をくくって歩き出した。

5kmあたりまではずっと登り。(緑の点線が上り下りを示していると途中で気がつく)

しかし途中那智大社から那智高原公園への道に迷い一旦下の方まで下ってしまった。

連れが那智の滝を見たいと駄々をこねるので仕方なく降りたのが失敗だった。

正しくは那智大社の横にある那智山青岸渡寺の裏から抜けて行くのが小口へのルートだった。

そして那智の滝の絶景ポイントも実は那智山青岸渡寺にあった。

1時間のタイムロスをしたが那智大社からゴールの小口までの参考時間は5時間と書かれていたのでバスの最終時刻まで6時間ある。

まだ1時間「も」余裕があると考えていた。

間違えたおかげで那智大社周辺の売店が開店する時間になり昼食のめはり寿司(350円)が買えたと喜んでいた。

このあたりから上りが段々きつくなる。

熊野古道というまるでただの道のような名称に騙されてはいけない。

高低差が800mある。

そして17km以上の道程。

5kmで800mの上りだとすると平均傾斜角9度だ。

もちろん5kmでは下っているところもありもっと急な勾配もある。

バラバラな形の石段や気の根っこがすべるすべる。

完全な登山だ。

ネットで調べても大変だったという感想を見つけられなかったのが敗因だった。

船見茶屋跡まで辿り着いたころにはフラフラになっていたのでめはり寿司を食べた。

疲れているのでビシャビシャの丸太に座っても最早気にならない。

それでもこの時点では1時間のアドバンテージがあった。

それから徐々に余裕を食いつぶしていく。

地蔵茶屋跡から石倉峠のルートが通行止めで2km以上の迂回ルートを歩かされたのも痛かった。

もうこのあたりになると迂回路に腹が立ちギャーギャー騒ぎながら歩いていた。

連れは呆れていた。

すれ違う人がいなくて助かった。

ちなみにすれ違った数十名は白人で日本人は1名だった。

そして極めつけは越前峠を越えたあたりの下り坂で右足親指の爪が剥がれた。

生まれて初めて生爪を剥がした。

無茶苦茶痛い。

そこで左足を出して下っていると今度は左足の親指の爪がもげた。

下り坂を歩く度に両足の指先に激痛が襲う。

親指を庇って足を横向きにして降りるので超ガニ股や内股などおかしな歩き方になり脚の至る所に負担がかかり痛くなってくる。

ハイキングだと考えていたのでトレッキングシューズではなく普段履きの若干大きめのスニーカーを使ったのが失敗だった。

そろりそろりとしか進めないので最終バスの時刻がどんどん近づく。

体はフラフラ足はズキズキで歩いているので転びまくり滑りまくる。

転んで五十肩を叩きつけた時は目から火花が出た。

本当に火花出るんだと感心する余裕などない。

転んだ回数も覚えていないほどであちこちスリ傷だらけで破傷風が気になった。

それでも滑落しなかっただけマシ。

古道といっても山越えなので滑落する場所が結構ある。

頑張ってゴールを目指していたがとうとう円座石あたりでバスの出発時間になる。

山登りが趣味の連れの足なら余裕で間に合うので途中で先に行ってくれと何度か依頼したが最後まで付き合ってくれた。

先に行ってくれた方がどれだけ楽だったかと思ったがそのあたりの気が利かないのは昔から変わらない。

妙なプレッシャーを後ろから受けながら歩くので相当無理をした。

激痛に耐えながら何とか最終バスの出た20分後に小口に到着した。

爪を剥がして3km以上山道を下ったわけだ。

もう身動きが取れなかったので連れが商店のおばさんにタクシーを呼んでもらうように依頼してくれた。

おそらくおばさんの知り合いだろうタクシー会社に電話して行先やバスの中継時間などを確認して呼んでくれた。

優しいおばさんで助かった。

このあたりの方は皆さんとても親切だ。

熊野市出身の会社の後輩もいい奴だった。

元々はバスで小口〜神丸〜新宮駅という乗り換えルートだったがタクシーで神丸までショートカットすることにした。

神丸での乗り継ぎ時間が40分くらいあるのを利用した。

タクシーで小口から新宮駅に向かってもJRの特急に間に合ったが8000円コースだ。

小口から神丸までならタクシーは約2500円で行ってくれた。

神丸から新宮駅まではフリーきっぷが使えるので安く戻ることができた。

あとはお弁当をコンビニで買って最終の南紀ワイドビューに乗り帰途についた。

そして今回も事故が起きる。

弁当を食べて足を揉みながら休んでいると、

車掌さんの「緊急停車します」アナウンスと共に電車が急ブレーキをかけたので席から飛び出しそうになる。

JRが緊急停車というので南海トラフ地震でも起きたのかと揺れを確認したが特に何も感じない。

連れはビール片手に「どうせ動物が当たったんだよ」という。

「そんなアホな」と返事をしたら、イノシシが接触したとアナウンスがあった。

連れは「ほらね」としたり顔。

何度もアナウンスでイノシシがぶつかって遅れたことを謝っていた。

途中から謝っているというより「イノシシがぶつかったのに最短で再出発したぜ」みたいな車掌さんの自慢話にすら聞こえてきた。笑

そして17分遅れで名古屋駅に到着した。

たしかに動物が車両に当たってたったの17分遅れというのはJRさん有能だ。

駅を出て歩こうとしたが脚は筋肉が千切れているのか棒のような感覚で、生指剥がした両足の指は激痛で、転んでぶつけた五十肩と擦りむいた手と腕もズキズキ痛いと満身創痍だった。

那智大社以降写真を撮る余裕がなかったのも古道の大変さがうかがい知れる。

今回は情報収集に見誤った。

せめてもっと少し短いコースを選んで計画すればよかった。

ただし連れは大門坂~小口間のコースもしくは小口~大宮大社のいずれかのコースより短いコースには譲らなかったと思うので綿密に調べていれば自分が行かなかっただろう。

でも旅は楽しかった記憶より辛かった記憶の方がとどめ易いので熊野古道を歩いたことは一生忘れない。

数日は筋肉痛と親指痛でまともに歩けず両方の爪は真っ黒に変色して痛みが少しずつ減っている。

つめは1年近くかけて生え替わるらしい。

病院には行ってないが以前口内炎で貰った抗生物質を指に塗って化膿しないように観察中だ。

数週間後に迫っている海外旅行が厳しいかも。


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