テレビで仙人の生活を観て

ある日ものすごーく暇だったので全録をチェックして「なぜそこに?未確認日本人」というテレ東系列の番組を見つけて観た。

ユースケサンタマリアさんが司会だ。

初見の番組だが1年前から放送しているらしい。

今回は富山の雪山で仙人のような0円生活を続けている方の取材だ。

電気、ガス、水道は一切ない。

山の中に寝るための小屋、水車小屋、炭小屋、紙漉小屋、厨房小屋、塩竈小屋など17軒を自力で建てて五右衛門風呂や自然の冷蔵庫などを作りひとりで自給自足で生きている。

食事は山で取れたもの、水は湧水を引いて、湯は薪で焚いて、炭を作り、灯りはランプと行燈だ。

以前は水車小屋で発電もしていた。

御年79歳らしい。

農家の長男に生まれたが農作業が嫌で公務員になり35歳の時に親が引退したが家を継ぐこともなく廃業することになってしまった。

50歳で趣味の登山にて小屋で魚を釣って野菜を作り自給自足の仙人のような暮らしをしている人に出会い衝撃を受けて自分も自給自足ができないかと始めてみる。

場所は奇しくも親が農業をしていた場所の外れ。

これまでの生活と山暮らしの半々だった。

周りや近隣も最初はアホか馬鹿かと白い目で見られてても本気の山暮らし生活に次第に理解を示して、数年も経つと年間800人の街に住む子供達の体験学習の場として受け入れて講師のような役も担っていた。

ところが3年前に台風で17棟の小屋にヘドロが流れ込んできて半壊して住めなくなった。

途方に暮れて普通の生活に戻ろうかと考えていた。

そこに大人になったここで体験学習をした子供達が次々やってきてヘドロ除去作業や小屋の修繕作業をしてくれてまた住めるようになった。

それから完全に山で自給自足の暮らしになった。

というお話だ。

構成で順序を変えてあたかも当初は何十年も山で暮らしをしているように大袈裟に見せかけるのはテレビ番組の常套手段だが実際には3年だ。

もちろん3年でも自足時給はすごい。

番組としては大自然の景色を見ながらの五右衛門風呂や、

雨で流れてきたくるみと自作した味噌を擦ったタレに有機栽培した里芋を湯がいておやつにするとか、

ハイジがアニメのオープニングで乗っているようなブランコを作って乗って見せたり、

発酵させた自家製茶を立ててテレビ局員に馳走したり、

雪の中の自然の冷蔵庫に保存していた3週間前に捕ったイノシシ肉の焼肉を食べたりとか、

を紹介していた。

表側の楽しそうな生活の紹介ばかりだったが全て自分でこなさないといけないのでお金を稼ぐのではなく日々生きるために働き続ける生活になる。

自分と同じ仕事嫌いで、子供の頃の農家から逃げ大学を出て県庁に就職して仕事に縛られるのが嫌いで効率的な生き方をしていた人が、なぜ賃金や年金で生活するのではなく自給自足のために働く生活になってしまったのか?

人の原点といえば原点ではあるがこれまでの効率的な人生と真逆だ。

10人くらいで街と隔離した村を作り担当を分担しての自給自足ならそれなりの生活が可能かも知れないがひとりで全てをこなすのは効率が悪過ぎる

自分も働いていた当時に観たら例えば塩なんてスーパーで200円で手に入るものをわざわざ大量の海水を運んで蒸発させてニガリを取り除いて作ったりする生活なんて頭がおかしい、あり得ないと突っ込んでいた。

でも今観ると最初は逃避のための山暮らしが体験学習のために実演した例えば塩作りなどが子供達にとっての自然との共存の教科書となり、その自然に生きるお手本のような生活をすることが彼にとっての生き甲斐に変わったんだろうと理解できる。

そして現在の夢が和紙を漉(す)いて5000枚作り88歳の米寿で周りの人達に配って片見分けにしたいと語っていた。

人間最期は生きた証が欲しいのだろうか?

分析するに仙人の影響でかじってみた山暮らしを子供達や周りの人に認めてもらえたので、生き甲斐が楽をすることから承認欲求が優先されるように塗り替えられたと考えられる。

もう少し美しい表現だと山暮らしを周りの子供達に紹介することで社会的貢献をしているという矜持だろうか。

自身は承認欲求が弱く矜持も薄いので彼の域には辿り着けていないしこの先辿り着かない可能性も高い。

それでも彼の生き方を多様性として肯定できるようになっていた。

辞めた頃ではありえない。

おそらくその頃にこんな内容の番組を観ようとすら思わなかった。

仕事を辞めて悠々自適な生活をおくることができたので心境の変化が生まれている。

だから間違っても自分自身もこの人が登山で別の仙人に出会って人生観が変わったように何かで転機を迎えて自給自足の人生なんて茨の道に近づかないよう注意して生きていきたい。

未だに土いじりをしたいとは思わないし仙人のように健康ではないので大丈夫だと思うが。

例えば旅行ではインドに近づくことは避けたい。

あの国に行って人生観が変わらなかった人を知らないので(笑)自分もひょんなことから変な生活に突入する可能性もある。


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