中国経済の行く末は「失われた30年」と同じ道か
楽待で柯隆(カリュウ)氏が解説する中国経済の動画を視聴し、中国政府が「失われた30年」の日本と似た経済政策を取ろうとしていることに改めて気づいた。
かつて、中国経済は安泰だと主張する評論家や学者が多かった時期に、同様のテーマで日本より長い失われた経済になっていく記事を書いたことがある。
しかし当時は生成AIがなかったため、自分の考えを十分に整理しきれなかった。
今回、柯隆氏の解説をもとに、改めて中国経済の現状を整理してみたい。
超長期国債の発行と「ドーマー条件」
柯隆氏によると、中国政府は以下のような財政政策を進めている。
• GDP成長率5%に対し、4%の国債発行を示唆
• 50年償還の超長期国債を1兆元以上発行
この政策は、「国の成長率が国債の利回りを上回っていれば、債務は膨らまず維持できる」というドーマー条件に基づいているように見える。
しかし、50年後に中国政府や中国共産党が存続しているかすら不透明な状況で、無利子、あるいは元本の償還すら保証されない国債を誰が信頼するだろうか?
日本の場合、政府の債務を日銀が引き受け、「いずれ政府が返済する」と建前を維持しているだけまだマシだろう。
投資家には、この「借金は耳を揃えて返すぞ!」というファイテングポーズが大切なのだ。
但し日銀は絶対に政府に借金の取り立てはしないし、投資家は自分達が買っている分さえ保証されれば問題ない。
しかし中国は、ほぼ空手形のような国債を発行し、それを市場で消化できると考えているのだろうか?
中国も「失われた30年」を繰り返すのか
おそらく中国政府は、日本と同様に中央銀行に国債を引き受けさせ、通貨供給を増やすことで経済を支える方針を取るのではないか。
これはまさに日本の「失われた30年」を招いた政策と酷似している。
もっとも、日本の場合、長期デフレに陥りながらも「円」を持っていれば一定の生活水準は維持できた。
物価は安定し、失業率も異常なほど低く、結果的に安定した社会主義的な経済が形成された。
当時は、「日本は中国以上に社会主義的な国だ」と指摘する中国の学者もいたほどだ。
この「安定した社会主義」を中国政府が狙っている可能性はある。
柯隆氏の解説で習近平主席は側近から「我が国はデフレに陥っている」と説明を受け「それは何だ?」と聞き返して「物価が下がること」と説明されて「それはいい」と喜んでいたらしい。
嘘か誠かは知らない。
しかし、ここで重要なのは、日本でこの政策が機能したのは日本人が円を強く信用していたからだという点だ。
では、中国人は元を同じように信用しているだろうか?
中国人は「元」よりもゴールドを信頼する
現実的に考えて、元への信用は日本の円ほど強くない。
中国政府は資本規制を強化し、外貨取引を制限するなどの措置を取っているが、これは裏を返せば、国民が元を信用していないからこそ、政府が管理を強めているとも言える。
自国通貨を信用していない国の国民は、しばしばゴールドを買い求める。
実際、中国の金購入量は世界最大級であり、不景気が続けば庶民はゴールドや仮想通貨に資産を移し、富裕層は海外不動産を買う流れが加速するだろう。
要は日本では「円紙幣のタンス預金」の代わりに、中国国内の不動産に流れていた資金が矛先を変えて金を買って「ゴールドタンス預金」になっていく現象が起きるのではないかということだ。
中国政府がどれほど経済安定策を講じても、国民が元を信用せず、資産を国外やゴールドに移す限り、長期的な安定は難しい。
中国が「失われた30年」の日本と同じ政策を採ることで、同じ結末を迎えるのかどうか。今後の動向を注視していきたい。
金価格上昇の可能性とその要因
中国人民銀行(PBOC)は、2024年11月から金の購入を再開し、2025年2月まで4カ月連続で金準備高を増加させています。
2025年2月末時点での金保有量は7,361万オンス(約2,284.5トン)に達し、外貨準備に占める金の割合は5.9%となっています。
また、世界の中央銀行も金の購入を続けており、2024年には3年連続で1,000トンを超える金を購入しています。この傾向は2025年も続くと予想されています。
さらに、地政学的な不確実性やインフレ懸念なども金価格を押し上げる要因となっています。これらの状況を踏まえると、今後も金価格が上昇する可能性が高いと考えられます。
中国政府の経済政策や国民の資産移動の動向、そして世界的な金需要の増加など、多くの要因が金価格の上昇を支える要素となっています。投資家にとって、金は引き続き注目すべき資産であると言えるでしょう。