近年、AI技術の発展により、病気のスクリーニング(ふるい分け診断)や診療の効率化が進んでいる。しかし、日本では医師会などの強固な既得権益が障壁となり、AIの導入が遅れていくことは間違いない。
しかしいずれ海外勢力や経済的な合理性の観点から、AIによる診断が主流になることは避けられない。そのとき、「凡庸な医師」は淘汰される運命にある。しかし、医師の役割が完全になくなるわけではない。AIが苦手とする分野でこそ、医師の存在意義が問われる時代が来るのだ。
AIによる診断の台頭と、日本の医療利権の壁
AIはすでに画像診断や病気のリスク評価において優れた成果を上げている。例えば、がんの早期発見や糖尿病の進行予測などでは、AIが医師の診断精度を上回るケースも増えている。
欧米や中国では、こうした技術の導入が加速しているが、日本では医師会が強固な既得権益を守るために規制を強めている。彼らにとって、AIの導入は医師の数を減らし、診療報酬を引き下げる要因になりかねないため、抵抗するのは当然といえる。
しかし、長期的に見れば、日本の医療費の増大や医師不足を考えたとき、AIの活用は不可避である。いずれ海外の圧力や経済的合理性により、日本もAI診断を本格導入せざるを得なくなるだろう。
AI時代における医師の生き残る道——希少疾患の診断という専門性
では、AIが普及した未来において、医師はどのような役割を果たせばよいのか?
一つの答えが、AIが苦手な希少疾患の診断にある。
例えば、「褐色細胞腫」という希少ながんの患者である吉岡紀子さん(44)は、診断までに10の病院を転々とし、3年近くかかったという。
この病気は年間10万人あたり6人未満しか発症しない希少疾患であり、症状が多岐にわたるため、誤診されることが多い。吉岡さんも、最初の病院では「原因不明」とされ、医師によっては「精神科に行ったほうがいい」とまで言われた。
しかし、最終的に新古賀病院(福岡県久留米市)の専門医の折田義也先生に診てもらったことで、ようやく正しい診断を受けることができた。
AIは膨大なデータに基づいて診断を下すが、希少疾患のようにデータが限られているケースでは適切な判断ができないことが多い。また、複数の疾患が絡み合うケースや、個別の症状の微妙なニュアンスを読み取ることも苦手だ。
したがって、多くの医師は今後、「一般的な病気を診断する役割」から「AIでは診断が困難な希少疾患を見抜く専門家」へとシフトしていくべきだ。
医師に求められる新たな役割と患者の意識改革
医師がAI時代に生き残るためには、以下の点が求められる。
1. AIに代替される領域の診療から脱却する
• 一般的な病気の診断はAIが得意とする分野であり、ここに依存している医師は不要になっていく。
2. 希少疾患や複雑な病態の診断能力を高める
• AIが苦手とする希少疾患や、複数の病気が絡み合うケースを診断できる専門性を持つことが重要。
3. 患者との対話力を高める
• AIはデータ分析には強いが、患者の微妙な心理状態や背景を理解することは苦手。患者と信頼関係を築き、適切な治療に導く役割は今後も重要になる。
一方で、患者側も**「AIで診断できない病気がある」という現実を理解し、セカンドオピニオンを求める姿勢を持つことが重要**だ。吉岡さんのように、最初の病院で「異常なし」と言われても諦めずに診断を求め続けることが、正しい治療につながる可能性がある。
AI導入は医療の進歩、しかし医師の価値がゼロになるわけではない
AIの進化によって、医療のあり方は確実に変わっていく。しかし、それは医師が不要になることを意味しない。むしろ、医師の役割は高度化し、希少疾患や複雑な病気の診断を担う「専門家」としての価値が高まるのだ。
医師会の利権に守られた現状では、AIの導入は遅れるかもしれない。しかし、いずれ医療費削減や海外の圧力によって、日本も変わらざるを得ない。
そのとき、多くの医師が「AIでは対応できない分野」にシフトしなければ、淘汰されることになる。
これからの医療に求められるのは、AIと医師の共存——そして、AIの弱点を補完する新たな医師像を確立することではないだろうか。
AI時代に医師が生き残るために必要なスキルと戦略
AIの台頭により凡庸な医師は淘汰され、希少疾患や複雑な病態を診断できる専門医が求められる時代が来ることを述べた。しかし、そうした未来を見据えたとき、医師は具体的に何をすべきなのか?
本記事では、AI時代に医師が生き残るために必要なスキルや戦略、そしてキャリア構築の方法について掘り下げていく。
1. AIと共存するために必要なスキルセット
AIが普及する中で医師が取るべき方向性は、以下の3つに集約される。
① 希少疾患・難病の専門知識を深める
AIは大規模なデータがある分野では圧倒的な力を発揮するが、希少疾患や症例が少ない病気に関する情報は十分に学習できない。そのため、以下のような分野に専門性を持つことが有効だ。
• 希少疾患専門医になる(例:遺伝性疾患、神経難病、膠原病など)
• 診断困難な疾患のスペシャリストになる(例:内分泌疾患、代謝疾患など)
• 複数疾患が重なるケースの総合診療医になる
例えば、欧米ではすでに**「診断専門医」** というキャリアが確立されつつある。日本でも、AI診断が一般化すれば、希少疾患の診断能力を持つ医師はAI時代でも価値を発揮できる。
② AI活用スキルを身につける
AIを「敵」とみなすのではなく、AIを活用する医師が生き残る。具体的には、以下のスキルが求められる。
• AI診断ツールの使い方を学ぶ(Watson for Oncology、Google Healthなど)
• AIと協働する診療フローを作る(スクリーニングはAI、最終診断は医師)
• 医療データ解析スキルを身につける(統計学・バイオインフォマティクス)
例えば、アメリカの放射線科医はすでに**「AIを駆使する放射線科医」と「AIに仕事を奪われる放射線科医」**に二極化している。日本の医師も同じ道を辿るだろう。
③ 患者とのコミュニケーション能力を磨く
AIはデータ処理には優れているが、「患者の不安を取り除くこと」「個々の症状の微妙なニュアンスを読み取ること」は苦手だ。
今後は、「診断はAI、患者との対話は医師」という形が主流になる可能性が高い。患者の心理的な側面に寄り添い、AIでは補えないヒューマンタッチの部分を強化することが重要だ。
• 患者の生活背景を深く理解する能力
• 治療方針を患者に納得させる説明力
• 多職種との連携スキル(看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなど)
特に、**「患者の悩みに耳を傾け、適切な治療を導くスキル」**は、AI時代でも必要不可欠な要素となる。
2. AI時代に適応するためのキャリア戦略
では、これから医師がどのようにキャリアを築いていけばよいのか?以下の3つのステップが鍵となる。
STEP 1: 専門分野を決める(希少疾患・難病 or AIとの協働)
まず、AIに代替されにくい分野を選ぶことが最優先だ。
• 希少疾患や難病の診断を専門とする
• AIを活用した診療フローを構築する(データ分析スキルを学ぶ)
特に、AIの発達により**「一般的な診療のみを行う医師」は不要になり、より専門性が求められる時代になる**。
STEP 2: AI関連のスキルを習得する
次に、AIを活用するスキルを学ぶことが重要だ。
• AI診断ツールのトレーニングを受ける
• ビッグデータを活用した診療プロセスを構築する
• AIを活用した研究を行い、論文発表をする
このようなスキルを持つことで、医師としての市場価値を高めることができる。
STEP 3: 患者対応力を強化する
最後に、AIにはできない「患者との対話力」を高める。
• カウンセリング技術を磨く
• 患者に寄り添う医療を実践する
• チーム医療の中心的役割を担う
例えば、総合診療医(ジェネラリスト)の役割は、AI時代においてますます重要になると考えられる。
3. 医師会の抵抗と今後の医療業界の展望
AIの導入が進めば、医師の権威が揺らぎ、医療業界の構造そのものが変わる可能性がある。
現在、医師会はAIの導入に強く抵抗しているが、それは既得権益を守るために過ぎない。
しかし、長期的には医療費の削減や医師不足の解消のために、AIは不可避な存在となるだろう。
この変化をチャンスと捉え、AIと共存しながら希少疾患の専門性を高める医師こそが、今後の医療業界で活躍できる。
結論:医師が生き残る道は「希少疾患診断 × AI活用」
AIの進化により、医療業界は大きく変わろうとしている。しかし、医師の価値が完全に失われるわけではない。
AIが苦手な希少疾患の診断や、患者との対話能力を強化することで、医師は新たな価値を発揮できる。
これからの時代、
• 「AIを活用できる医師」
• 「AIが苦手な分野で専門性を持つ医師」
この二者だけが生き残ることになる。
凡庸な医師は淘汰され、優秀な医師はAIと共存しながら新たな医療を切り開いていくだろう。
医師として生き残る道は、自らの専門性を磨き、AIに負けない価値を生み出すことにある。
