農家の所得向上という目的で百姓一揆というデモ活動が開催されたようだ。
プロ市民がどこからかカネをもらって政府や国民の安全保障を妨害するためのデモと違い、本当に困っている人たちが集まって国民や政府にアピールするデモはどんどんやっていくべきだ。
ただ悲壮感漂うデモは嫌だなぁ〜と現地取材をしていたもぎせかさんの動画を観たところ比較的皆さん明るく行進していたのでホッとした。
令和の百姓一揆――米価格高騰でも厳しい農家の現状とは?
東京都心で3月30日、「令和の百姓一揆」と称したデモが行われ、米農家や酪農家ら約3,200人(主催者発表)が参加した。参加者たちは表参道や原宿をトラクター約30台と共に行進し、「農家を守ろう」「農家に補償を」と訴えた。彼らが求めたのは、欧米並みの所得補償の実現だ。
このデモは、日本の農業、とりわけ米農家が直面する厳しい現状を広く訴えるために行われた。米の価格は歴史的な高騰を見せているにもかかわらず、生産現場の経営は依然として厳しい。その背景には何があるのだろうか?
なぜ米価格が上がっても農家は苦しいのか?
米の価格が上がれば農家の収入も増えるはずだが、現実はそう単純ではない。その理由として、以下の要因が挙げられる。
1. 生産コストの高騰
燃料費、肥料、農業機械の維持費、人件費など、あらゆるコストが上昇している。特に輸入依存度の高い肥料や燃料は円安の影響を受け、農家の負担を増している。
2. 流通構造の問題
日本の米流通はJA(農協)を介するケースが多く、農家が直接市場価格の恩恵を受けにくい。中間マージンが発生するため、米価が上がっても農家の手取りが増えにくい構造になっている。
3. 消費の減少と需要の変化
日本人のコメ離れが進み、米の消費量は年々減少している。さらに、安価な輸入米や代替食品の増加により、国内の米需要が縮小している。
4. 政策の問題
欧米では農家に対する直接所得補償が充実しているが、日本の補助金政策は複雑で、十分な支援が行き届いていない。かつての減反政策(生産調整)により、農家は生産量を抑えざるを得なかったが、現在は制度が変わっても補助金に依存せざるを得ない状況が続いている。
どうすれば農家の経営は改善できるのか?
1. 直接所得補償の導入
欧米並みに農家への直接補償を拡充し、安定した経営を支える政策が必要だ。特に小規模農家が持続的に経営できる環境を整えることが重要。
2. 流通の改革と販路拡大
JAを経由せず、農家が直接販売できる仕組み(直売所、オンライン販売、ふるさと納税の活用)を強化することで、中間マージンを削減し、農家の収益を向上させる。
3. 生産コストの削減支援
肥料・燃料の価格抑制策を講じるとともに、農業の効率化を進める。AIやドローン、ロボット技術を活用したスマート農業の普及支援が求められる。
4. 国内需要の喚起と輸出促進
学校給食や企業の社食で国産米の使用を増やす政策を導入するほか、海外市場への輸出拡大を支援し、日本産米のブランド化を進める。
まとめ
「令和の百姓一揆」が示すように、米農家の苦境は深刻だ。米価の上昇が必ずしも農家の利益につながらないのは、生産コストの高騰、流通の問題、需要の低迷、政策の不備といった複合的な要因があるからだ。
この問題を解決するには、直接所得補償の強化、流通改革、生産コスト削減、国内需要喚起と輸出促進といった多角的なアプローチが必要になる。日本の食の安全保障のためにも、農家が持続的に経営できる環境を整えることが急務だ。

GHQ減反政策の呪い
減反政策は1970年代に本格導入されましたが、その起源を辿るとGHQ(連合国軍総司令部)による戦後政策に行き着きます。GHQは日本の食糧事情を改善するためにアメリカ産小麦の輸入を推奨し、日本人の食生活を米中心からパンや麺類へとシフトさせようとしました。その一環で、小麦粉の消費を増やすために学校給食にパンを導入し、米の消費を抑える動きが強まったと言われています。
1950年代以降、日本政府も食の欧米化を進め、さらに国内での米の供給過剰が問題視されるようになりました。そのため、1970年に「生産調整(減反政策)」が導入され、農家には米の作付けを減らす代わりに補助金を支給する制度が作られました。この結果、日本の米生産は政府の管理下に置かれ、自由な市場競争が抑制される構造になりました。
現在も減反政策の影響は続いているのか?
減反政策そのものは2018年に廃止されました。しかし、その影響は根深く、日本の米農業の構造に以下のような問題を残しています。
1. 補助金依存体質
減反による補助金が長年続いたため、農家の多くが市場競争に適応しづらい状況になっています。減反廃止後も補助金制度(米の直接支払い交付金など)が継続され、一部の農家は依然として補助金なしでは経営が難しい状態です。
2. 米価の変動に対する脆弱性
減反政策のもとで人工的に生産量が調整されていたため、市場原理に基づく価格形成が弱かった。減反廃止後は生産が自由になったものの、価格が乱高下しやすくなり、農家の経営が不安定になっています。
3. 食生活の変化による需要低迷
GHQ時代の政策とその後の食の欧米化が進んだ結果、日本人の米消費量は戦後の半分以下に減少しました。需要が減る一方で供給量の調整が難しくなっており、結果として農家の収益が圧迫されています。
4. 海外市場の開拓不足
日本の高品質な米は海外での需要もありますが、政府の輸出支援はまだ不十分です。国内市場が縮小する中、輸出戦略の強化が急務ですが、規制や価格競争の問題もあり、なかなか拡大できていません。
どうすれば「減反の影」から脱却できるか?
• 補助金依存からの脱却
直接所得補償を整備しつつ、農家が自立して収益を上げられるような市場改革が必要です。
• 自由競争の促進と新たな販路の開拓
JAを介さない直販や、ネット販売の強化、ふるさと納税などを活用し、農家が自ら市場と向き合える環境を作る。
• 輸出支援の強化
日本産米のブランド化を進め、海外市場の拡大を後押しする。特にアジア市場では高級米の需要があるため、戦略的なマーケティングが求められる。
• 消費拡大の施策
日本国内での消費を増やすため、学校給食や企業の食堂で国産米の利用を義務付けるなどの政策を検討する。
結論
減反政策の直接的な影響は薄れつつあるものの、その影響で作られた「補助金依存」「米価の不安定化」「需要低迷」といった構造的な問題は未だに続いています。日本の農業が本当に自立し、安定した収益を確保できるようにするには、自由競争の促進とともに、政府の支援政策の方向転換が求められます。