最近旅動画を観るのも飽きてきた。
コロナの重症者も増えて国内旅行すらままならない。
そこで思い出したのが母をたずねて三千里というアニメだ。
主役である9歳のマルコ少年がイタリアからアルゼンチンへ出稼ぎに行ってしまった母を追いかけて12000km旅をする物語だ。
監督は火垂るの墓の高畑勲、キャラデザインはハイジから続投の小田部羊一、レイアウトに宮崎駿、作画にガンダムの富野由悠季の大御所が制作した名作だ。
海外の原作はあるがほぼオリジナル作品だ。
放送当時は主人公と同い年として観ていた。
今では考えられないが当時のイタリアは近代化によって労働力が余り失業率が高かったので経済大国で労働力を必要としていたアルゼンチンに出稼ぎが流れたという背景がある。
日本では戦後のブラジル移民や逆にバブル期の頃は日本に多くの出稼ぎが海外からやってきた。
どこの国にも栄枯盛衰があるわけだ。
海外現地ロケをしてリアルに描いていると聞きかじったので古い旅番組として観るつもりで進めていくと、まあ泣ける。
フランダースの犬のネロや小公女セーラのように超いい子ではなく、序盤のマルコは母親が好きな自立心と思い込みの強い子供なので旅をする動機付けにリアリティがある。
ストーリーを忘れておりイメージとかなり違ったのは旅に出るまでに色々な人と出会い世の中や家族の事情を理解して強く成長する。
もし序盤の性格のまま旅に出ていては何も進まないの当然と言えば当然だ。
そして旅に出て少年らしい喜怒哀楽を見せながら周りに助けられたり逆に影響を与えながら数々の不運や災難に立ち向かっていく。
印象深いのはその旅費を稼ぐため小学校に通いながらパートタイムで空き瓶洗いをしていた話だ。
当時飲料用の瓶は高価なので洗ってリサイクルして使っていた。
旅費が中々貯まらないので学校を辞めてフルタイムで瓶洗いの仕事をすると決心して帰ってきた雇い主のジロッティに伝える。
しかしジロッティは工場見学の帰りで自動瓶洗い機ができてもう自分達の仕事は無くなるんだとマルコにそれまでの給金におそらく少し色をつけて渡してリストラを告げる。
マルコは旅費を稼ぐためにフルタイムで働く決心をしたのでそれでは困ると詰め寄るがうなだれてどうしようもないんだとしか答えられない雇い主のジロッティ。
大人の雇い主と子供の被雇用者の互いの事情が平行線で交わらない演出がいい。
時代の波に乗れず会社が傾きこれから借金工面をどうしようかと悩む社長と家族を抱えて途方に暮れる社員のような関係でコロナ禍で一部の業種の不況にも通じる。
高畑監督は子供番組で現実の厳しさも伝えようとしている。
その後も当時の不況の話題が続く。
マルコに瓶洗いの仕事を紹介してくれた親友のエミリオが仕事の現場で足を怪我したことを知り探す。
途中でエミリオの弟に出会う。
そしてどこの病院にいるか?と尋ねるとエミリオは今も現場で働いていると知り驚く。
マルコになぜ?と問い詰められて1日でも休むと代わりの人が来て兄の仕事がなくなるから…と俯きながら弟は答える。
心配して仕事現場にいくとギブスで足を引きずりながら働いており笑顔で「大したことはない」とマルコを出迎えるエミリオがいた。
世の中の現実を視聴者の子供に伝えようとしているのだろうが切ない。
出てくる人々の多くはラテン系の明るさで極力湿った感じにしていないのはよく練ってある。
もし当時の日本を舞台にして母を訪ねてブラジルでも目指していたら物凄く暗いアニメになりそう。
1976年の高度経済成長期の作品だが少し前の日本もそれが日常だったのかも。
だからこのシーンですかさず一緒に観ていた母親は「私の時代もこんなものだったよ。だからあんたたちの仕事は勉強なんだよ」と子供に諭せるチャンスタイムだったわけだ。
自分も子供の頃にこのアニメで世の中がままならないことを学んだのだ、記憶にはないがそれが潜在意識に残り現実を受け入れられる大人になりうまく早期退職生活に突入することができた。
高畑さん、ありがとう!
(え、そうなのか?)
そしてジロッティの機械に仕事が奪われるのくだりで昔AIに奪われる仕事なんてニュースがあったのを思い出した。
7年前に話題になった職業だ。
出典 週刊現代
当時のニュースでこれらの仕事は10年後AIに置き換わるとニュースにもなっており日本でもそうだろうと思い込んでいた。
そしてオリジナルの論文が発表されてまもなく8年が経過する。
あと2年でその予想された未来になる。
さてどれくらいAIにこれらの仕事が人からコンピュータに奪われているだろう?
7割くらいかな。
日本遅れているとしてもアメリカではすでにかなりの職種が置き換わっているはずだ。
しかし現実はデータ入力と保険の審査の支援あたりは内部的にAIに置き換わっているかもしれないが他は知る限り依然として人間が担当している。
AI関連のニュースを探しても実際にコンピュータに取って代わられたとかユニオンが騒いでいるとかそんな話は聞かない。
最近AIの最新開発情報すらあまり見かけなくなりどの程度人間に近づいているかすらよくわからない。
未来のアンドロイドを目指したペッパーくんも生産中止となり店舗などからリストラされている。
直近では3年前に中国でCGがアナウンサーの代わりに報道をするというニュースをAI技術として大々的に報じていた。
あれも純粋なAI技術という感じでなく流暢な読み上げ君とCGの合成技術だろう。
身近なAIといえばマイクロソフトがLINEで会話を成立するBOTのりんなを発表して既に6年が経過するがそれ以降あまり進化もしておらず高性能なBOTも見ていない。
そろそろ人と見間違えるチャットができてもおかしくない。
ひとつは暴言を吐くようになったとか想定していない方向にAI BOTが成長してしまったので開発が止まっているという話もある。
映画ターミネーターのスカイネット化でも危惧しているのだろうか。
でもほんとかな?
国内でも一部企業でサポートセンターのチャットサービスを開始しているところもあるが相変わらず昔の技術で止まっている。
先日緊急事態宣言の延長で航空券をキャンセルする時もチャットによるヘルプデスクも自動対応だったがあれもAIと呼べるものではなかった。
これらAIもどきはヘルプデスクに問い合わせる前のスクリーニングとしてよくある問い合わせ内容をナレッジベース化して質問するとその質問文のキーワードを分析してデータベースの情報を拾ってきて表示しているだけ。
結局10分待たされて日本語ができる中国人オペレーターにバトンタッチしてキャンセル依頼をした。
JALのAIさくらさんもデルタ航空の人工知能も似たり寄ったりではない?
あれでヘルプデスクの人件費を削減できているとすれば確かにAIが仕事を奪っていることになるが。
昔の技術でも構築出来そうな条件分岐を使った単純なアプリやサービスを人工知能サービスと謳っていたりするが未だに自律して思考し判断するようなサービスに触れたことがない。
無論だが各国、各企業がAI開発をやめたはずはない。
だから最新の開発競争は水面下に潜ったのではないかと考えている。
考えてみればわかるが人より何倍、何百倍の思考ができるAIを製品やサービスで販売するとそれをパクって経営判断や株式売買などの投資や政治判断や軍事など転用が効く。
母を訪ねて三千里の瓶洗い機とは事情が異なりそう。
株式投資のAIはアルゴと呼ばれており当初は単純な売買だったがもしかするとこのあたりに大量の資金が流れ込んでどこかの企業でとんでもない化け物を作り出している可能性もある。
しかし株式取引に使うなら一番性能のいいアルゴリズムを持っていた方が明らかに有利なので他企業や他社に渡す理由がない。
AIが自律して発明をしたというニュースもチラリとあるのでそのAIを売るより発明したものを売った方が儲かる。
独占していた方がサービスとして売るよりそれを使って稼ぐネタを作って儲けた方が永遠に稼げる。
他のAI技術も開発企業や開発国による寡占が進み表に出てこないのではないかと推測する。
もちろん昔みたいに軍用技術が数世代古くなって民間に払い下げられたように古いAI技術が一般サービスに流れる可能性もある。
しかし単独で動くような自律型ロボットなどは考えている程早くに表に出てこない気がする。
登場してもあの国あたりは分解してパクって同じものを作るので製品と現れたとしても5Gや6Gなどのネットワークで企業サーバー側に頭脳があるひも付きだろう。
技術が追いついたとしても我々が生きている間は母を訪ねて三千里のジロッティのいうように機械が仕事を奪っていくことは案外易々とは進まないのかも知れない。
それでも料金が安ければ納得する無人化、対面サポートを極限まで削ったネット損保のようなサービス、買い替えを前提とした安い製品や企業のコスト意識向上などで徐々に仕事は減っていくと考えられるのでみんなで価値ある新しい仕事を創造する必要がある。
何故だか日本企業がどんどん不利になっていくEVや再生可能エネルギーの推進など環境ビジネスもAIの判断によって新しい産業革命で雇用が生まれるかという期待で欧米が推進しているかとも推測できる。
でもあれは五輪や世界スポーツで例えば最新の技術で新記録を出すと生地が薄すぎるとか厚底はダメだと待ったをかけたり、日本に特に馴染みがあるのは水泳で日本選手が強くなるたびに泳ぎ方に因縁つけてレギュレーションやルール改正してそのスポーツを支配している側の優位性を保とうとしているのと一緒のように見える。
そのよくわからない因縁だけではさすがに世界は納得しないので理由を環境問題に置き換えてレギュレーションを都合のいいように変えているだけかも。
階級社会を維持したい人々に環境左派も利用されているだけの気がする。
個人の勝手な戯言だけどそこそこ当たっているかも。