3月8日午前、横浜市磯子区で発生した交通事故では、74歳の女性が市営バスにひかれ、死亡するという痛ましい結果となりました。警察は、バスの運転手を過失運転傷害の疑いで現行犯逮捕しましたが、このケースでは「運転手が本当に回避できたのか？」という点に焦点を当てる必要があります。
事故の概要
報道によると、被害者の女性は手押し車を押しながら車道を歩行していました。その後、バス停に停車していた市営バスの前に出た際、バスが発進し、下敷きになったとされています。この状況では、バスの運転手から女性の動きがどの程度見えていたのか、発進時にどれだけの注意を払うことが現実的だったのかが争点となります。
歩行者最優先の原則の重要性
日本の道路交通法では、歩行者が交通弱者であり、その安全を最優先に考えるため「歩行者優先」の原則が定められています。このルールは、歩行者が横断歩道を渡る際や、車道と歩道の区別がない道路を歩く際に適用されます。
この原則があるおかげで、日本では比較的安全な交通環境が保たれています。例えば、東南アジアの一部の国では「クルマ優先」の意識が強く、歩行者が優先されないために事故が多発しており、日本のようなルールがなければ歩行者の安全が脅かされることは間違いありません。
それでも運転手に不公平感のあるケースも存在する
歩行者優先の原則を維持することは大切ですが、今回の事故のように、歩行者の動きが予測困難な状況での事故まで一律に運転手の過失が重く問われるのは問題です。
今回のケースでは、
• 手押し車を押しながら車道を歩いていた
• バスが停車中に前に出てきた
• 運転手が女性を確認できたか不明
といった要素があり、運転手側が女性の動きに気づくのが難しかった可能性があります。それでも、現行の交通法では運転手が「歩行者の動きを常に予測し、どんな状況でも事故を防ぐ義務」があるとされるため、逮捕に至ったのでしょう。
(歩行者側が全面的に悪くても責任の比率は歩行者2に対して運転手8が一般的)
しかし、すべてのケースで運転手の責任を重くするのは、公平性に欠けると言わざるを得ません。
ドライブレコーダーを活用した「無罪判定」の導入を
現在、ドライブレコーダーの普及により、事故発生時の状況を客観的に判断することが可能になっています。運転手が適切な注意を払っていたにもかかわらず、歩行者の行動が突発的だった場合、過失割合を減らしたり、場合によっては運転手の無罪を判断する仕組みを導入すべきです。
例えば、
1. ドライブレコーダーの映像をAI解析し、運転手が物理的に回避可能だったかを判断する
2. 回避不可能と認定された場合、運転手の過失割合を軽減する
3. 特定の条件を満たせば、運転手を刑事責任から免除する（無罪判定）
といった仕組みが考えられます。
まとめ：歩行者最優先を維持しつつ、公平な判断を可能にする仕組みを
今回の事故は、歩行者の安全を守ることの重要性を再認識させる一方で、運転手にとって不公平なケースがあることも浮き彫りにしました。歩行者優先の原則は維持しつつも、ドライブレコーダーを活用して回避可能性を判断し、必要に応じて運転手の責任を軽減する仕組みを導入するべきです。
交通事故においては、単に「誰が悪いか」ではなく、「どうすれば公正かつ合理的に責任を問えるか」が問われるべきではないでしょうか。
