六年ぶりの眼底検査。
過去の記録をたどると、最後に訪れたのはもう六年前になるらしい。
今回は以前とは違う眼科を選んだ。
ネットで評判がよく、予約もオンラインで完了。
事前の問診票には 「飛蚊症の急激な悪化で網膜剥離の可能性があると以前言われたため、検査を希望」 と記入し、いざクリニックへ向かう。
洗練された空間
さすがは地域でも評判の高いクリニックだ。
受付から検査まで、無駄のない流れるような動線。
看護師（あるいは検査技師？）の対応も心地よい。
優しい雰囲気を纏いながらも、手際の良さは職人のそれだ。
まずは眼圧検査、視力検査、簡易眼底写真撮影。
次々と進んでいく。
まるで高級デンタルクリニックのような洗練された設備と雰囲気に、「なるほど、評判通りだ」と思わず納得する。
女医の微笑み
そして診察室へ。
現れたのは、ゆったりとした口調の女性医師だった。
テキパキした看護師とは対照的なおっとりとした雰囲気。
彼女は慎重に目の中を診てから、写真を見つめる。
「7割の確率で網膜剥離は大丈夫だと思いますが……眼底検査をされますか？」
そう優しく微笑む。
この「7割」という数字が、ふとした不安を掻き立てる。
人間の心理とは不思議なもので、「ほぼ大丈夫」と言われると逆に「では、3割は？」と考えてしまうものだ。
迷うことなく 「お願いします」 と答えた。
瞳孔を広げるための点眼薬をさされ、20分の待機。
ゆっくりと視界が滲んで少しホワイトアウトする。
やがて呼ばれ、精密な眼底検査の結果が告げられた。
「網膜剥離の兆候はありませんよ」
胸を撫で下ろす。
医療の未来と、人の手の温もり
ふと思う。
AIの進化が進めば、やがて日本でも医療のスクリーニングはAIが行うようになるだろう。
そうなれば、医師という職業も大きく変わる。
しかし、それでも生き残る医師は限られてくるはずだ。
それは 「レアな疾患を見抜く優秀な医師」 か、「患者の機微を感じ取るコミュニケーション能力の高い医師」。
あるいは、このクリニックのように 「患者が安心して身を任せられる場を提供できる医療機関」 なのかもしれない。
次なる試練——緑内障
診察の終わり際、医師は言った。
「次回、緑内障の検査をしましょう」
緑内障——不治の病とも言われる、視野を奪う静かなる恐怖。
思えば、六年前にも疑われていた。
帰宅後、過去のブログを確認すると、当時の検査結果の写真が残っていた。
次回の検査時に持参し、比較してもらおう。
六年の時を経て、再び向き合うべき時が来たのかもしれない。
